これは、しがく新聞2月号のコラムです。
■リード
平成二十三年度、日本の税収は約四〇兆九千億円。国家予算はその倍以上の九十二兆四千億円に上る。なかでも医療費は前年度比で三・一パーセント増の三十七兆八千億円。国民の為に三十七兆円もの予算を割くことはありがたいことだが、各所から「使いすぎではないか」という声も聞こえてくる。今回は医療業界を通して日本の未来を考えてみたい。
■本文
真弓小児科医院という小児科が東京の吉祥寺にある。院長の真弓定夫先生は「薬を出さない医者」として有名な方だ。真弓先生は日本人の健康を考える上で、歴史を遡ることが重要と言う。日本は先の大戦で敗戦国として憲法を押し付けられただけでなく、様々な面で支配され食べ物までもコントロールされた。その影響で伝統的な和食から西洋食へ変わっていったのだ。今でこそ、日本食が体に良いことは世界中で有名な話である。「世界で最も体に良い食べ物は日本食である」とアメリカの上院議員マクガバン氏がレポートを書いているし、世界中のセレブが好んで食べているのが日本食だ。しかし、戦後の日本では、洋食が高級食と持てはやされ、食の西洋化が進んだ。結果として日本人の体に合わない食生活が定着し、体の不調を訴える人がどんどん増えてきているのだ。
同時に医療も西洋化が進み「病院・医者・薬」が劇的に増えた。病気にかかり、体がきついときは「病院・医者・薬」ほどありがたいものはない。しかし、これから日本を背負って立つ若者は、自分の体を自分でケアすることを当たり前とし、予防をしながら、軽い体調不良は自分で治すことを常識とすべきだ。そのためには、体に関する基礎知識が大切になってくる。
私ごとになるが、過去三度、尿路結石を患った。尿道に石ができ、その石が下へ落ちる毎に激痛が走る。一生付き合っていく病気なのかと弱気になったこともあった。しかし、生活を改善し、ストレス解消、食べ物の管理、適度な運動、ストレッチを続け、これまで七年ほどは順調に過ごせている。風邪は年に一回くらいはひくが、体のオーバーホールと思えばちょうど良い。鼻水、鼻づまり、咳は症状が軽ければ一晩で治る。こうした症状は、体がウイルスと戦っている証拠である。体が快復に向かって戦っているのだ。つらいからといって薬で治してしまうと、こうした免疫作用を押さえてしまう恐れがある。もちろん、薬によって治る病気もたくさんあり、尊い命が救われているのも事実だ。薬全てを否定するつもりはない。しかし、「風邪をひいたらすぐに薬」という安易な考えは危うい。
医者の本来の姿とは、病院に患者が来なくなることを望み、喜ぶのが理想であるはずだ。しかし、残念ながら医療費も患者数も増え続けている現実がある。今後我々に求められるのは、安易に薬に頼ることなく自立することだ。自分の体は自分で予防し、免疫力などの自然治癒力を高める。その為の知識を得て、日々体のメンテナンスをする。そうなると医療費は極力使わないことになる。病院関係者や製薬業界の方にとっては厳しい話だが「自分の業界が儲からないときは、国民が幸せである」という原点を認識してもらいたい。自衛隊が「自分たちが不必要な時こそ、日本が平和な証拠」と喜ぶのと同じだ。
食事を見直し、体のことを知り、予防を学ぶ。日本人が元々おこなっていたことを再び取り戻す。そうすれば医療費の負担が減り、健康で元気な活力ある国民が増え、日本の未来が明るく照らされるはずだ。