これは、しがく新聞3月号のコラムです。
■リード
二月十一日、建国記念の日。第五回国護り演説大会を開催した。「消された国の歌」をテーマに演説をした星野薫さんが聴衆を魅了し、見事優勝に輝いた。決勝進出者八名中六名が女性であり、来年は男性の演説者にも期待したい。今回は開催五年を経て、改めてなぜ「国護り演説大会」を開催しているのかをお話したい。
■本文
世界の誰もが羨む奇跡の国である日本。治安の良さ、民度の高さは東日本大震災で世界中に証明された。戦後、先人の努力によって蓄えられた日本の財産は純資産額二百五十兆円。断トツの世界一だ。世界中の製品で必要とされる部品や技術など、日本無くしては成り立たない。日本は特許収入も世界トップクラスだ。そんな日本に対して、ニュースを見ると、たまに間違った解説を耳にする。「国の借金千兆円、どうする、子どもの世代に押しつけるのか」。借金だけが残ってしまうかのように感じてしまうマスコミのミスリードに騙されてはいけない。経済規模が大きくなれば、当然、負債額も増える。同時に資産額も増える。次の世代に素晴らしい財産を残してくれた先人に感謝である。
しかし、これだけ素晴らしい日本でも、油断をすれば瞬く間に財産や安全を奪われてしまう。元警察官僚の佐々淳行氏の言葉で「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」とある。国の安全保障は自衛隊だけがおこなうものではない。全国民でおこなうものだ。平和な時代だからこそ、一人でも多くの若者が「国を護るのは自分だ」という自覚を持って欲しい。
多くの若者は、自分のことで精一杯で、忙しい日々を送っている。そんな彼らも、同年代の人が日本の良いところを学び、それを語る姿に格好良さを感じれば、自分も日本のことを話せるようになりたいと思うものだ。日本を憂い、伝統や文化を後世に伝えようとする意識。国を背負い、政治家や教育者、経営者を目指している姿。自分のできる範囲から一歩ずつ日本を良くしていこうと努力する生き方。これらを目の当たりにすると、どうなるか。もちろん、自分の夢や欲望も大切だ。しかし、いつまでも子どものように自分の事だけを考えているのは格好悪いと感じ、個人主義から抜け出し、公を考える大人になっていくはずだ。
人はなぜ、何かを護ろうとするのか。当然、嫌いなものを護ろうとはしない。好きだから、大切だから一生懸命護ろうとする。日本の未来を背負っていく若者が、果たして護るべき日本のことを好きなのだろうか。大切だと思っているだろうか。甚だ疑問があった。
『国家の品格』を著した藤原正彦氏は、「感性や美的感覚は、大人が感動する姿を見て子どもが真似る」と言っている。同じことは国に対する姿勢にも当てはまるだろう。両親、教師をはじめとした周りの大人の日本に対する態度を見て、子どもの日本観が固まっていくと言っても過言ではない。大人として反省点は無いだろうか。
「日本が好きで大切だ。護りたい」と子どもたちに心から思ってもらうにはどうすれば良いか。大人が子どもの前で日本に感動している姿を見せること。日本が世界に貢献していく上でも、末永く繁栄していかなければならないと熱く語ること。もちろん、語る大人が、年相応の魅力を持っていなければならない。こうした「日本を大切にしたい」という気持ちをつくることこそ、国を護るために最も必要な基礎である。そのために、今後も国護り演説大会を通して、メッセージを発信し続けたい。