学生に教えるべき当たり前のこと

これはしがく新聞1月号のコラムです。
■リード
近年は毎年「就職氷河期」と言われ、大学生の就職活動の厳しさが話題になっている。当社では、就職活動の支援を始め早五年になる。就職支援のプレミアムスタイルを活用する三千人弱の学生は、昨年同様、九十五パーセントほどの学生の就職が決定しそうである。しかし、就職を決めるだけではないのが、プレミアムスタイルの特徴でもある。今回は今の学生に伝えていることをお話したい。

■本文
大学三年生の就職活動が十二月から本格的に始まった。その裏側で、就職が決まらず頑張っている大学四年生もたくさんいる。今年も変わらず就職戦線は厳しいようだ。就職活動を支援している私たちには、まさに十人十色と言える学生との出会いがあり、一人ひとりに様々なエピソードがある。テレビ番組や新聞からでは、なかなか伝わらない真実が、目の前にある。
こうした厳しい就職状況のなかで、社会は、どちらかと言うと学生に同情的であるように見える。しかし、同情的な世間をあざ笑うかのような就職活動生の現実に唖然とさせられることもある。昔からある話ではあるが、面接を無断でキャンセルしたり、平気で嘘をつき自分を良く見せようとしたりする学生。インターネットで予約した会社説明会は、会場には四割ほどしか学生が来ないというのも珍しい話ではない。
学生の自由な就職活動を妨げないように、大企業を中心に多くの企業が、いわゆる「倫理憲章」に賛同している。倫理憲章では、正式な採用活動の開始を大学三年生の十二月に定めたり、卒業年度の十月一日より前に入社を誓約させることを禁じるなどの規程を設けている。ただし、十月一日以降に入社誓約書を提出しているにもかかわらず、より良い就職先を求めて就職活動を続ける学生もいると聞く。「他の学生もやっているから」と後押しする親や教授もいる。
私にも子どもがいる。就職支援で多くの学生を見ている。だからこそ、少しでも良い待遇のところへ入社させたいという気持ちは痛いほどよくわかる。しかし、法律で許されているからと言って、自由を振りかざし、企業に迷惑をかけて良いものか。こうした事実に私は釈然としない想いでいる。

学生を一人採用するには、経営者としては大きな責任が伴う。もちろん、その学生の影で内定がもらえなかった学生も存在する。入社する予定の学生が土壇場で辞退すれば、欠員補充のために、新たに採用活動をする必要も出てきてしまう。そして、企業に嘘をついてまで就職活動を続ける学生は、一体どんな社会人に育っていくのだろうか。このような学生は、気まずさ、引け目、腹黒さがしっかり染みこみ社会へ巣立っていく。世間が学生を弱者、企業を強者として扱うこと全てを否定するつもりはない。しかし、それで学生は勘違いをしてしまっている現状があることを認識すべきだ。内定をとることよりも大切なことがある。社会人として「ルールを守る」という、当たり前のことを、今一度学生に教育していかなければならない。そして、その後ろ姿を見せるべき私たち大人が、まずは襟元を正すべきではないのか。
私は学びに来ている学生に、はっきりこう言っている。「自分の言葉に責任を持ちなさい。本当に入社する意志がある場合のみ内定を承諾しなさい。承諾したのに、就職活動を続けることは絶対に勧めない。そんな無責任な社会人、無責任な言葉の軽い大人になるな」と。
これからも学生に「恥の文化」や「人に迷惑をかけない」「自分の言葉に責任を持つ」ことなど、日本人として当たり前のことをしっかり指導できる自分でありたい。

 


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