国護り演説大会開催の意義

これは、しがく新聞3月号のコラムです。

■リード
二月十一日、建国記念の日。第五回国護り演説大会を開催した。「消された国の歌」をテーマに演説をした星野薫さんが聴衆を魅了し、見事優勝に輝いた。決勝進出者八名中六名が女性であり、来年は男性の演説者にも期待したい。今回は開催五年を経て、改めてなぜ「国護り演説大会」を開催しているのかをお話したい。

■本文
世界の誰もが羨む奇跡の国である日本。治安の良さ、民度の高さは東日本大震災で世界中に証明された。戦後、先人の努力によって蓄えられた日本の財産は純資産額二百五十兆円。断トツの世界一だ。世界中の製品で必要とされる部品や技術など、日本無くしては成り立たない。日本は特許収入も世界トップクラスだ。そんな日本に対して、ニュースを見ると、たまに間違った解説を耳にする。「国の借金千兆円、どうする、子どもの世代に押しつけるのか」。借金だけが残ってしまうかのように感じてしまうマスコミのミスリードに騙されてはいけない。経済規模が大きくなれば、当然、負債額も増える。同時に資産額も増える。次の世代に素晴らしい財産を残してくれた先人に感謝である。

しかし、これだけ素晴らしい日本でも、油断をすれば瞬く間に財産や安全を奪われてしまう。元警察官僚の佐々淳行氏の言葉で「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」とある。国の安全保障は自衛隊だけがおこなうものではない。全国民でおこなうものだ。平和な時代だからこそ、一人でも多くの若者が「国を護るのは自分だ」という自覚を持って欲しい。

多くの若者は、自分のことで精一杯で、忙しい日々を送っている。そんな彼らも、同年代の人が日本の良いところを学び、それを語る姿に格好良さを感じれば、自分も日本のことを話せるようになりたいと思うものだ。日本を憂い、伝統や文化を後世に伝えようとする意識。国を背負い、政治家や教育者、経営者を目指している姿。自分のできる範囲から一歩ずつ日本を良くしていこうと努力する生き方。これらを目の当たりにすると、どうなるか。もちろん、自分の夢や欲望も大切だ。しかし、いつまでも子どものように自分の事だけを考えているのは格好悪いと感じ、個人主義から抜け出し、公を考える大人になっていくはずだ。

人はなぜ、何かを護ろうとするのか。当然、嫌いなものを護ろうとはしない。好きだから、大切だから一生懸命護ろうとする。日本の未来を背負っていく若者が、果たして護るべき日本のことを好きなのだろうか。大切だと思っているだろうか。甚だ疑問があった。

『国家の品格』を著した藤原正彦氏は、「感性や美的感覚は、大人が感動する姿を見て子どもが真似る」と言っている。同じことは国に対する姿勢にも当てはまるだろう。両親、教師をはじめとした周りの大人の日本に対する態度を見て、子どもの日本観が固まっていくと言っても過言ではない。大人として反省点は無いだろうか。

「日本が好きで大切だ。護りたい」と子どもたちに心から思ってもらうにはどうすれば良いか。大人が子どもの前で日本に感動している姿を見せること。日本が世界に貢献していく上でも、末永く繁栄していかなければならないと熱く語ること。もちろん、語る大人が、年相応の魅力を持っていなければならない。こうした「日本を大切にしたい」という気持ちをつくることこそ、国を護るために最も必要な基礎である。そのために、今後も国護り演説大会を通して、メッセージを発信し続けたい。

 


医療費が増え続ける日本の未来とは

これは、しがく新聞2月号のコラムです。

■リード
平成二十三年度、日本の税収は約四〇兆九千億円。国家予算はその倍以上の九十二兆四千億円に上る。なかでも医療費は前年度比で三・一パーセント増の三十七兆八千億円。国民の為に三十七兆円もの予算を割くことはありがたいことだが、各所から「使いすぎではないか」という声も聞こえてくる。今回は医療業界を通して日本の未来を考えてみたい。

■本文
真弓小児科医院という小児科が東京の吉祥寺にある。院長の真弓定夫先生は「薬を出さない医者」として有名な方だ。真弓先生は日本人の健康を考える上で、歴史を遡ることが重要と言う。日本は先の大戦で敗戦国として憲法を押し付けられただけでなく、様々な面で支配され食べ物までもコントロールされた。その影響で伝統的な和食から西洋食へ変わっていったのだ。今でこそ、日本食が体に良いことは世界中で有名な話である。「世界で最も体に良い食べ物は日本食である」とアメリカの上院議員マクガバン氏がレポートを書いているし、世界中のセレブが好んで食べているのが日本食だ。しかし、戦後の日本では、洋食が高級食と持てはやされ、食の西洋化が進んだ。結果として日本人の体に合わない食生活が定着し、体の不調を訴える人がどんどん増えてきているのだ。
同時に医療も西洋化が進み「病院・医者・薬」が劇的に増えた。病気にかかり、体がきついときは「病院・医者・薬」ほどありがたいものはない。しかし、これから日本を背負って立つ若者は、自分の体を自分でケアすることを当たり前とし、予防をしながら、軽い体調不良は自分で治すことを常識とすべきだ。そのためには、体に関する基礎知識が大切になってくる。

私ごとになるが、過去三度、尿路結石を患った。尿道に石ができ、その石が下へ落ちる毎に激痛が走る。一生付き合っていく病気なのかと弱気になったこともあった。しかし、生活を改善し、ストレス解消、食べ物の管理、適度な運動、ストレッチを続け、これまで七年ほどは順調に過ごせている。風邪は年に一回くらいはひくが、体のオーバーホールと思えばちょうど良い。鼻水、鼻づまり、咳は症状が軽ければ一晩で治る。こうした症状は、体がウイルスと戦っている証拠である。体が快復に向かって戦っているのだ。つらいからといって薬で治してしまうと、こうした免疫作用を押さえてしまう恐れがある。もちろん、薬によって治る病気もたくさんあり、尊い命が救われているのも事実だ。薬全てを否定するつもりはない。しかし、「風邪をひいたらすぐに薬」という安易な考えは危うい。
医者の本来の姿とは、病院に患者が来なくなることを望み、喜ぶのが理想であるはずだ。しかし、残念ながら医療費も患者数も増え続けている現実がある。今後我々に求められるのは、安易に薬に頼ることなく自立することだ。自分の体は自分で予防し、免疫力などの自然治癒力を高める。その為の知識を得て、日々体のメンテナンスをする。そうなると医療費は極力使わないことになる。病院関係者や製薬業界の方にとっては厳しい話だが「自分の業界が儲からないときは、国民が幸せである」という原点を認識してもらいたい。自衛隊が「自分たちが不必要な時こそ、日本が平和な証拠」と喜ぶのと同じだ。
食事を見直し、体のことを知り、予防を学ぶ。日本人が元々おこなっていたことを再び取り戻す。そうすれば医療費の負担が減り、健康で元気な活力ある国民が増え、日本の未来が明るく照らされるはずだ。

 


学生に教えるべき当たり前のこと

これはしがく新聞1月号のコラムです。
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近年は毎年「就職氷河期」と言われ、大学生の就職活動の厳しさが話題になっている。当社では、就職活動の支援を始め早五年になる。就職支援のプレミアムスタイルを活用する三千人弱の学生は、昨年同様、九十五パーセントほどの学生の就職が決定しそうである。しかし、就職を決めるだけではないのが、プレミアムスタイルの特徴でもある。今回は今の学生に伝えていることをお話したい。

■本文
大学三年生の就職活動が十二月から本格的に始まった。その裏側で、就職が決まらず頑張っている大学四年生もたくさんいる。今年も変わらず就職戦線は厳しいようだ。就職活動を支援している私たちには、まさに十人十色と言える学生との出会いがあり、一人ひとりに様々なエピソードがある。テレビ番組や新聞からでは、なかなか伝わらない真実が、目の前にある。
こうした厳しい就職状況のなかで、社会は、どちらかと言うと学生に同情的であるように見える。しかし、同情的な世間をあざ笑うかのような就職活動生の現実に唖然とさせられることもある。昔からある話ではあるが、面接を無断でキャンセルしたり、平気で嘘をつき自分を良く見せようとしたりする学生。インターネットで予約した会社説明会は、会場には四割ほどしか学生が来ないというのも珍しい話ではない。
学生の自由な就職活動を妨げないように、大企業を中心に多くの企業が、いわゆる「倫理憲章」に賛同している。倫理憲章では、正式な採用活動の開始を大学三年生の十二月に定めたり、卒業年度の十月一日より前に入社を誓約させることを禁じるなどの規程を設けている。ただし、十月一日以降に入社誓約書を提出しているにもかかわらず、より良い就職先を求めて就職活動を続ける学生もいると聞く。「他の学生もやっているから」と後押しする親や教授もいる。
私にも子どもがいる。就職支援で多くの学生を見ている。だからこそ、少しでも良い待遇のところへ入社させたいという気持ちは痛いほどよくわかる。しかし、法律で許されているからと言って、自由を振りかざし、企業に迷惑をかけて良いものか。こうした事実に私は釈然としない想いでいる。

学生を一人採用するには、経営者としては大きな責任が伴う。もちろん、その学生の影で内定がもらえなかった学生も存在する。入社する予定の学生が土壇場で辞退すれば、欠員補充のために、新たに採用活動をする必要も出てきてしまう。そして、企業に嘘をついてまで就職活動を続ける学生は、一体どんな社会人に育っていくのだろうか。このような学生は、気まずさ、引け目、腹黒さがしっかり染みこみ社会へ巣立っていく。世間が学生を弱者、企業を強者として扱うこと全てを否定するつもりはない。しかし、それで学生は勘違いをしてしまっている現状があることを認識すべきだ。内定をとることよりも大切なことがある。社会人として「ルールを守る」という、当たり前のことを、今一度学生に教育していかなければならない。そして、その後ろ姿を見せるべき私たち大人が、まずは襟元を正すべきではないのか。
私は学びに来ている学生に、はっきりこう言っている。「自分の言葉に責任を持ちなさい。本当に入社する意志がある場合のみ内定を承諾しなさい。承諾したのに、就職活動を続けることは絶対に勧めない。そんな無責任な社会人、無責任な言葉の軽い大人になるな」と。
これからも学生に「恥の文化」や「人に迷惑をかけない」「自分の言葉に責任を持つ」ことなど、日本人として当たり前のことをしっかり指導できる自分でありたい。

 


私が考える理想の経営者像

これはしがく新聞12月号のコラムです。
■リード
 当社の就職支援事業「プレミアムスタイル」での話。大学生向けに開催している就職塾にて、ある学生さんから「理想の経営者とは?」という質問をいただいた。マスコミに取り上げられるような、短期間で業績をV字回復する敏腕経営者が果たして理想の経営者なのか。今回は、私が考える理想の経営者像についてお伝えしたい。

■本文
 新社長就任後、わずか一年で黒字化!業績がV字回復!ある日、そんなニュースが流れていた。新たな経営者による奇跡の黒字化ということなのだろう。しかし、その中身が本当に賞賛に値するものばかりなのか、疑問に思うことがある。効率化や合理化、高収益と、一見都合の良い言葉を並べ立て、裏ではコツコツ努力してきた人を何千人も切り捨ててはいないか。大勢の人を不幸にしておいて、一部の人だけが潤っている状況はおかしいと思う。私は「V字回復」「急成長」ほど、怪しいものはないと思っている。一気に業績を上げる人ほど、マスコミや投資家は注目するが、私には自分の玄関先を綺麗にするために、近所を汚しているように見えるのだ。

 数年前、ある急成長している証券会社の経営者の講演を聴く機会があった。年間何十億円もの利益を出している企業だ。社員数の推移を聴き驚いた。毎年削減を続け、ついには八十名まで減らしたという。ITを導入し、人件費を減らして高収益を達成中とのことだ。周りの受講者は感心してメモをとっていたが、私は何かが欠落している気がした。経営者の役割は、一般的に言えば、利益を生み出し、納税を果たした上で、株主に還元することだ。ただ、それだけではなく、社員を雇用するという責任を負っているのではないか。残念ながら、その経営者からは、とにかく自分の力を誇示したいという気持ちが見え見えで、雇用する側の責任など感じることはなかった。

 近江商人の教えで「三方良し」という考えがある。「売り手よし、買い手よし、世間よし」という自分本位ではない商売のあり方を指す言葉だ。かつて、渋沢栄一をはじめ数多くの経営者が日本の未来のために頑張ってきた。真面目に働き、納税をし、寄付をしてきた。後藤新平は言った。「財を遺すは下。事業を遺すは中。人を遺すは上なり。されど財無くんば事業保ち難く、事業無くんば人育ち難し」

 今の世代の経営者は、先輩経営者に感謝し、後輩経営者の見本となり、未来の日本のために何を残すかを真剣に考えるべきだ。

 新宿に本社のある大手警備会社と親しくさせていただいている。そこで会う社員は、皆が凛としており、業績も堅調に伸びている。経営者も大変立派な方だ。警備員のアルバイトから育て上げ、幹部にまで登用する指導力は流石だ。それだけではなく、スポーツ選手、政治家、ジャーナリストなど、将来日本のために活躍するであろう若者に対して惜しみなく、数え切れない支援をしている。勝ち馬に乗ることを嫌い、育ったら独り立ちさせている。日本にとって多大なる貢献をしている。まさに後藤新平のいう、お金も事業も人材も残している、私にとって理想の経営者の一人である。

 私は「理想とする経営者像」を構築しながら生きている。自分が見本となり、後輩経営者が育ち、日本中に広がっていけば良いと考えている。理想の経営者とは、持続可能な成長企業を経営し、社員を健康面や人格面、経済面で充実させ、日本のために良き人材を残せる。そんな人物だと思う。私も理想の経営者に少しでも近づけるように日々精進し続けたい。

  


目の前の一人を育てる尊さ

これはしがく新聞11月号のコラムです。

■リード
「尖閣はオレの物だ」。軍事力が整ってきた中国は、いよいよ本格的に沖縄を侵略する段階に入った。平和に慣れてしまった日本人も、中国の本質にやっと気づきだしたようだ。しかし、国を護るのは政治家や自衛隊だけではない。
わたしたち一人ひとりが国を護るという意識が必要だ。一国民が今からでも始められる国護りとは何だろうか。

■本文
 日本がなかなか良くならないのは、国民一人ひとりの責任である。政治家、経営者、外資、中国、韓国…。他人のせいにして、結局、自分が国のために貢献しようとしない人が多いのが実情だろう。良い政治家を輩出するのは国民の役割であり、悪い政治家を追放するのもまた国民の役割である。想いの強い人、影響力のある人は自分の一票に留まらず、百票も千票も動かす。あなた一人が強い気持ちを持てば、その結果、良い政治家が選ばれる。良い政治家は、悪い法律を捨てて、日本人の安全と財産を守る良い法律を作るだろう。いずれ現憲法を改正し、国民の幸せを考えた新憲法を制定するはずだ。目の前の一人に「毎回選挙に行く」と決意させるのは尊い。

 民放のテレビ局は、基本的に視聴率をとることのできる番組を制作するものだ。だから、テレビ番組は国民の心の鏡とも言える。低視聴率に苦しむテレビ番組も、決して良い番組が無いわけではない。自分が良い番組を観て、周りに広める。視聴率が上がれば、以後も放送は続く。真似をする他局が出てきて自分も視聴率を稼ごうと良い番組を作る。良いテレビ番組を見つけ、目の前の一人に伝えるのは尊い。

 日本中にあるお店も同じだ。国民がお金を使うお店は今後も残る。国民のレベルが下がれば、安いだけで偽物のお店が生き残り、本物を扱う素晴らしいお店は淘汰されていってしまう。少々割高でも、本物を扱うお店で買う国民が増えれば、本物が残る。例えば、日本の伝統文化の一つ、きものを考えてみる。日本全国に生地があるが、国民がきものを買わないと、この伝統は途絶える。きもの職人も年々減り続けている。きもの産業にとっては死活問題である。国民がもっときものにお金を使えば、職人の生活が成り立ち、きものという伝統文化は今後も残る。何にお金を使うのかを目の前の一人に教育することは尊い。

 不健康な状態で良い仕事をし続けるのは、並大抵の精神力ではない。いくつになっても健康な体は、多くの人の憧れであるはずだ。健康であるならば大抵は幸せである。自分が健康体となり、そして、目の前の一人を健康に導く。きちんとした食事、十分な睡眠、適度な運動、そして周りの人への感謝の心を持つことで多くの人は健康になる。今の日本では、医療費が約三十七兆円使われている。何かがおかしいことに気づかなければならない。目の前の一人を健康な体に導くことは尊い。

 日本を護る仕事は国民全員の義務である。
まずは自分が政治に参加し、良い情報を得て、大切なものにお金を使い、健康促進を勉強し、目の前の一人を育てる。これらがライフワークになることで、世界の手本となる日本国の土台作りができるのだ。

 日本とは自分である。そう考えれば、大切に育てたいものであるし、他人を土足で上がらせたいとは思わないはずだ。ただの一平方メートルも奪われてはいけないことに気づくはずだ。国家は誰か他人が創るものではない。一人ひとりの国民。そう、わたしが、あなたが創り上げるものなのだ。これからも、こうしたことを目の前の一人に対して地道に説いていこうと思う。

 


いかにデフレから脱却するか

5月5日
これはしがく新聞5月号の巻頭コラムです。

■リード
デフレーションの略語である「デフレ」。新聞やテレビのニュースで頻繁に耳にするこの言葉。物の値段が下がり続けることを指すデフレが今の日本の最大の懸念であり、これ以上デフレが深刻化すると恐ろしいことになる。今回は、いかにデフレを脱却していくべきかを、多くの国会議員に影響を与えている三橋貴明先生から普段習っている話をもとにお伝えしたい。

■本文
 牛丼一杯四百円だった二十年前と比べ、今や一杯二百八十円。三割も安くなった。一個人の消費者から見れば、物は安い方が良いに決まっている。だが反面、企業は価格競争に巻き込まれ、業績は軒並み悪化。そのため、給与が下がり、ボーナスカット。挙げ句の果てにはリストラが進む。企業側から見れば至極当然である。

 将来に不安がある今の日本では、消費者は安いものを買い、多くを貯蓄に回すようになる。日本全体を見渡すと、国民の預金額は約一五〇〇兆円。日本の歴史上、最も預金額が積み上がっている。ちなみにバブル期だった二十年前の預金額は約一〇〇〇兆円。二十年で五〇〇兆円増えた計算となる。なぜこのようなことが起きたのか。多くは、政府が国債を発行して得たお金を使い、景気対策で様々な形で国民の手に渡ったものだ。しかし、国民は将来の不安からお金を使わずに貯蓄に回す。この悪循環から二十年抜け出せないでいる。

 歴史を振り返れば、一九二九年から始まった世界恐慌の影響によってデフレに陥ったアメリカでは、わずか四年でGDPが半分になった。失業率はなんと二十五パーセントに達した。それだけ失業者が増えれば治安も乱れ、餓死者も出てくる。日本でも、失業率が上がり、当時のアメリカのような事態になることは絶対に避けたい。では、どうすれば好景気の良い時代になるのか。それには企業が投資を活発にし、社員採用を増やし、国民は好景気になると感じて、安心して消費を増やすことが不可欠だ。

 仙台市は今、好景気の地域として知られている。復興事業により建設業者中心にたくさんの仕事があり、夜の繁華街は銀座からホステスがたくさん流れてきていて、バブル期さながらの様相だ。デフレ脱却のヒントはここにある。

 まず、政府は思い切った復興支援に乗じた景気対策を打つべきだ。京都大学の藤井教授が言うように、復興予算を五〇兆円から一〇〇兆円の規模で組み、日本を自然災害に強いモデル国家として創り上げるのだ。関東での大震災に備え、病院や学校をはじめとする公共施設の耐震化をおこない、太平洋側の道路や線路が使えなくなる事態を想定して、日本海側の高速道路と新幹線を完成させる。原子力発電所にも今以上の安全対策を講じ、政治的なリスクによる価格変動が大きい石油や天然ガスだけに頼らないようにする。すでに一万五千ヶ所の橋は、危険を回避するため重量規制がかけられている。こうした道路・橋の整備をおこなう。公共事業を増やすことで雇用が生まれ、経済が循環する。年間三万人の自殺者も必ず減る。消費税増税は、インフレになってからで良い。今は復興国債や建設国債を発行し、民間企業にお金を落とす時期なのだ。

 日本を良くする為に、やらねばならないことはたくさんある。今は、デフレ脱却が緊急課題である。八十年前の大蔵大臣、高橋是清を見習ってほしい。彼は見事に日本経済をデフレから脱却させた。もちろんデフレ脱却は通過点だ。「日本はGDP一〇〇〇兆円を達成し、世界のモデル国家として頼られる」。そんな壮大な目標を掲げられる政党、政治家に一票投じてもらいたい。

 


自分を見抜いてくれる人は必ずいる

3月1日

これはしがく新聞3月号のコラムです。

■リード
厚生労働省や文部科学省、各調査機関が就職内定率を発表している。その数字を見て「今年の就職活動は厳しい」と報道されている昨今である。しかし、どんなに厳しいと言われようが、就職活動を勝ち抜いていく学生と、なかなか上手くいかない学生に分かれていくのも現実である。就職活動が上手くいかない学生に足りないものは何なのか。日々大学生に接している立場から考えてみたい。

■本文
就活支援を無料でおこなっている当社の『プレミアムスタイル』には毎年数千名が登録する。早い人は大学三年生の二月に内々定をもらい就職先が決まる。昨年は震災の影響で採用活動は遅れたものの、例年は四年生の春から夏にかけて内々定をもらい就職活動を終える学生が多い。こうした時期の学生に対して私が特別にすることは何もない。秋も深まり、就職先がなかなか決まらない学生に対して私の就職塾が始まる。この頃まで決まっていない学生は、様々な事情で就職活動の開始が遅れた学生もいるが、大半は就職活動を続けてきたが上手くいっていない学生だ。聞くと「面接に百回以上落ちた」と言う学生もいる。少し上手くいかないだけで早々に就職活動を諦めてしまう学生もいるなか、就職塾にやってくる学生は決して諦めていない。

彼らは男女、文系理系を問わず、とても頑張り屋で精神的にも強い。辛いのに、明るく気丈に振る舞っていることがよく伝わってくる。希望を捨てずに頑張っている学生がせっかく来てくれるのだから私は就職塾の講師に全身全霊をかけている。就職塾と言うと、やれエントリーシートの書き方やら、面接でどう話せば良いかなど、「就職活動をどう上手くやるか」を指導していると想像される方も多いかもしれない。しかし、私は就職活動の話をすることはほとんど無い。

なぜ内定がもらえないのか。全員と言うつもりは毛頭ないが、彼らの共通項は雰囲気が暗く、運が悪そうに見えることだ。「人を見た目で判断するな」とお叱りを受けるかもしれない。しかし、松下幸之助は「運が良いと思うか」と尋ね、「はい」と答えた人を採用したという話は有名だ。採用に「運が良さそう、愛嬌が良い」という二点を重視した松下幸之助の考えは、多くの経営者も共感するはずだ。そのくらい本で読んだことがあると学生は言う。ただ、読んで覚えて答案に書けば良いわけではない。愛想の良さを演じたところで結局は見抜かれる。ではどうすれば良いか。私は「今まで起こった出来事は全て自分を高めるトレーニングで、全てが自分の武器になる」と指導している。そうすると目の前の困難を含め、自分に起こること全てに感謝するようになっていく。「ありがたい」といつも考えている人は明るい表情になり、人相も良くなっていく。そして、困っている人を放っておけず電車で席を譲る。誰が見ているわけでもないのに店のスリッパを揃える。食事の世話をしてくれた人に、一言「美味しかったです」とお礼を言う。こうした行動を続けているうちに自然と自信や自尊心が芽生えてくる。明るく自尊心がある人には存在感が備わってくる。それをアピールするのではなく、こうした心で面接官に会いに行くのだ。自ずと結果はついてくる。

最後に諦めず就職活動を続けている学生に送る。貴方の良さを見抜いてくれる人は必ずいる。それを信じて欲しい。貴方を見抜いてくれた人がいる企業は必ず将来性があるはずだ。社会に出ても「見抜かれても良い自分」であることが何よりも大切なことなのだ。

  


時代のせいにしない生き方

2月15日

これはしがく新聞2月号の巻頭コラムです。

■リード
 平成二十三年は皆様にとってどのような年だっただろうか。日本では東日本大震災という未曾有の災害が起こった。世界に目を向けると、トルコ・ニュージーランドの地震、タイ・パキスタンなどの洪水、ユーロ危機、南スーダンの独立、アラブの春など国のあり方を変える大きな動きもあった。このような流れを受けて平成二十四年が始まったのだが、どのように時代を捉えて動けばいいのか。一つの見方を提言したい。

■本文
 日本の危機だ!新聞や週刊誌は部数を伸ばすためにセンセーショナルな記事を掲載し、「このままでは大変なことになる」と煽る。テレビ番組も同様だ。国民は、その情報に日夜踊らされ「今年はこうなる、日本はああなる」と盛りあがる。経済誌ではバブル崩壊後の日本を「失われた二十年」として、全く経済成長がなかったと分析している。確かに、長期のデフレ不況から立ち直る事は、世界中を見回しても、歴史を振り返ってみても簡単なことではないことがわかる。ただ、勉強不足の政治家がデフレ脱却を第一とせず、消費税増税、TPP賛成などデフレを長引かせるような政策を推進しているのは由々しき問題だ。

 不況により、企業は投資に消極的になり、資金需要も伸びない。国民が将来の増税に備え、消費が減り貯蓄が増えていてはGDPは下がる一方だ。GDPが下がると当然国家予算は減り、防衛費も下がってしまう。震災後は領海・領空が侵犯され、自衛隊のスクランブル発進も前年比で倍増ペースとなっている。中国・ロシアは、今がチャンスと日本の偵察をしている。

 もっと身近なところでも気になる事がある。若者や中小企業経営者の発言である。給料や売上が上がらないのを、政治家のせいや景気のせいにしているのだ。私は約二十年前に転職し、自分の夢を叶える為に独力で道を切り開いてきた。当時私が考えていた事は、「今は良いけれど、人間力が無かったら将来リーダーにはなれない」ということだった。だから、必死で本を読み、寸暇を惜しんで仕事に没頭し、家に帰るのが早朝になることも当たり前だった。

 会社勤めだった二十代の頃を振り返ると、良い時期でも厳しい時期でも高い評価をいただいた。そんな中、給料が止まったこともあった。では私は、それを時代や景気のせいにしようとしたか。そんなことは考えたこともなかった。給料が止まりながらも、会社から求められている事を求められている以上に、上司の想定を超えることを目標に頑張ってきたのだ。

 会社は、景気や年間売上などとは関係なく、正当に私の頑張りを認めてくれた。周りには給料に対して不満を言っている先輩もいた。私は「会社が厳しい時期に目標未達成で、休日ゆっくりしているような人のどこを評価するんだよ。給料が欲しければ、会社の想定を超える成果を持ってこいよ」と思っていたものだ。

 当社は、社員百二十名程度の中小企業である。デフレや不景気が言い訳になるほどの大企業ではない。政治は堕落し、経済は落ち込んでいる世の中だが、若者や中小企業の経営者にとっては、たいして関係は無いのである。「言い訳をやめて本気で働け」と言いたい。そうすれば、ものの数ヶ月で変わるはずだ。もし、変わらないのであれば本気さが足りないのだ。上手くいかないのは汗と涙が足らないのだ。弊誌を読まれている全ての方は、強く逞しく生きてもらいたい。その、一人ひとりの頑張りが今の厳しい日本を変えていくのである。