これは、しがく新聞5月号のコラムです。
■リード
新製品、新しいサービス、そして自分自身。一生懸命売り込むことももちろん重要だが、本当によいもの、よい企業、よい人、いわゆる「本物」と出会うと、人は頼まれなくても誰かに話したくなる。人から人へと口コミで広まるのだ。小手先にとらわれず、本物を追求することが、上手くいくための秘訣ではないかと思う。今回は当社の事業を通じて本物と口コミの関係について話していきたい。
■本文
十周年を迎えるキャリアコンサルティング。私はスーパーの店員から若者向けの教育会社に転職して二十三年を数える。振り返れば目の前の若者に一生懸命教育することばかり考えてきた。若者の中にも人間力やリーダーシップを身につけたいという方はたくさんいる。しかし、お金を払ってまで学びたいという方は意外と少ないのが現実だ。会社設立当初は、ご友人を三名ご紹介いただいて、やっと一名に入会していただくくらいだった。入会後一年も経てば十人中九人が何かしらの理由で辞めていった。勉強とは続かないものだという割り切りもあった。ただ結局は教育に魅力がなかったのだ。
そこから地道な努力を続けてきた。多くの改善を繰り返し、その甲斐もあって、今では半数以上の方が入会一年を過ぎても学び続けてくれている。認定しているプロ講師の資格をとったメンバーさんは五十名を超えた。毎月のしがくセミナーでは四百名以上が集まる。お正月に開催している恒例の靖國神社参拝には六三〇名が参加した。
二〇〇六年一月に出会った人間学を学ぶ月刊誌『致知』が、自分の考えに大きな影響を与えた。致知をとおして、「本物の書物には、本物の読者が集まる」ということを知った。本物が本物を呼ぶのだ。ここで言う本物とは「偽者ではない」だけではなく「見かけだけのものではない」ということだ。致知と出会い、本物を意識するようになったことで予期しない幸運なことが巡ってくることになる。
就活中の学生にも、いままで培ってきた教育のノウハウをぶつけてみてはどうか。そういう想いで始めた学生への就活支援事業。有料のNEXUSで、ここ二年間で学んだ約千名の内、就職を希望し、内定が決まらなかったのはたったの一名だ。無料のプレミアムスタイルには、二五四八名の二〇一三卒生が登録した。内定率は九八・〇七パーセントを記録した。そのうちの七五・七四パーセントは口コミで集まってきた。無料だからというだけで、ここまで口コミで集まるとは考えてもいなかったが、プレミアムスタイルが役立ち、満足してくれた学生が、友人や後輩を紹介してくれるのだろう。大変ありがたいことだ。本物を追求し続けたからこそ口コミにより広まっていった。
それだけではなく、取引先の企業からも紹介をいただくようになった。「キャリアコンサルティングには良い学生さんがたくさんいる」ということで求人のある企業の経営者を紹介していただけるのだ。学生と企業の縁を大事にしてきたことへのご褒美をいただいているという感覚だ。目の前の若者に何が与えられるか。本物を目指し実力をつけ、情熱を維持し続けねばなるまい。
本物を追求することを掲げ、指導の仕方からカリキュラムの内容など、全てを見直し始め、徐々に改革を試みてきた。そして、さらなる進化を目指して、この七月から「しがく式」という教育プログラムを開始するに至った。ここに、若者に必要なリーダーシップの基礎教育を凝縮させた。この教育を軸に、本物を目指す精神で社員一同社業に邁進したい。